こんにちは。トラ党予報士、小川真季です。
プロ野球が開幕してはや2か月。今シーズンもホームランダービーの上位は阪神勢が占めています。
甲子園には「浜風」という、特に左バッターにとって逆風となる風がよく吹くため、タイガースの選手が本塁打王を獲るのは至難の業。
昨年はサトテル選手が、「史上最強助っ人」と言われたバース以来39年ぶりに本塁打王を獲りましたが、阪神ファン的には新聞やネットのホームランダービー欄をこれだけ毎日注目して見るのは久しぶりではないでしょうか。
今回は、甲子園で吹く風について。特に甲子園名物「浜風」は重要ポイント!
「浜風」の正体は、気象学的にいうと「海陸風」の「海風」です。
「海陸風」とは、陸と海の暖まり方の違いによって生まれる風で、晴れた昼間は海から陸へ、夜は陸から海へ向きを変える、沿岸部特有の局地的な風のことです。
陸(土)は海(水)より早く暖まり、早く冷える性質があるため、昼間は陸上の空気が先に暖まって軽くなり、上昇気流が発生します。空気が上空へ上がっていくと、その下部を補うように、海の方から空気が流れ込んでくる、つまり海から風が吹いてきます。
これが「海風」。夜はその逆のことが起こり、「陸風」が吹きます。
甲子園の南西、約一キロの所には「甲子園浜」がありますが、ここで「海陸風」が発生しているわけです。

甲子園浜は、北西から南東方向へ「斜め」に広がっているのがミソ。
浜に対してほぼ直角に吹く「海陸風」は、ここでは「海風」が南西風、「陸風」は北東風になります。
その「海風」が甲子園まで吹いてくると、こんな風になります。

よくテレビの実況では「ライトからレフト方向に浜風が吹いています」と表現されますが、厳密にいうと、「浜風=海風」は、ライトから、ちょっと三塁ベース方向に吹いています。(もうちょっと西南西になる時もありますが。)でも、バックネット側からバックスクリーン上の旗のなびき具合を見ると、ほぼライトからレフト方向に吹いているように見えます。
ライト方向に飛んできた打球は、この風に押し戻される形になり、ホームランになるような強い打球も、平凡なライトフライになってしまうわけです。
さらに、左打ちのバッターは、ホームランになるような強い打球を打とうとすると、体の回転方向の加減でライト方向に打球が飛びやすいのですが、思い切り打っても浜風に押し戻されてホームランにならない。
だから甲子園では「左バッター不利」と言われているのです。
しかし、サトテル選手は左バッター!「浜風」の強い甲子園を本拠地にしていて本塁打王を獲るとは、いかにすごいか!
ほんま、エグイんですよ(笑)
かつて、左バッターの金本選手がFAで阪神に移籍する際、「甲子園は左バッター不利だから」と心配する金本選手に、当時の星野監督が「最近は異常気象で浜風が逆向きになっとる」と説得をしたというエピソードがありますが(もちろん冗談!)、浜風が逆になる異常気象…気象予報士的には非常に気になる案件です。
さて、昼間は「海風」と書きましたが、だったら夜のナイターは「陸風」なんちゃうの?と思いますよね。でも、ナイターの時も浜風が吹いています。実は、甲子園付近では「海風」から「陸風」に変わるタイミングが遅いのです。
近年、「ヒートアイランド現象」といって、都市化の影響で夜間も気温が下がりにくい現象が都市部で起こっていますが、甲子園周辺も工場や住宅の密集地で、気温が下がりにくい地域です。なので、日が沈んでもすぐには陸地の気温が下がらず、「陸風」になりません。
また、海風と陸風が入れ替わる間、無風の時間帯がありますが、これを「夕凪」と言います。
瀬戸内地方では「瀬戸の夕凪」という言葉があって、瀬戸内海はもともと風が弱いため、夕凪の時間が長く、蒸し暑くなるといわれていて、瀬戸内海の端っこにあたる甲子園浜でも、その影響が考えられます。
ちょうど今年からジェット風船飛ばしが再開しましたが、今のジェット風船は専用ポンプでふくらましますが、以前は口でふくらませていたので、固い風船だとふくらますだけで汗だくになることがよくありました。そんな時、バックスクリーンの旗を見上げると、風が完全にやんでいるのです!そう、7回表、大体8時~9時ごろは夕凪の時間。風の無いスタンドはめちゃくちゃ蒸し暑くなります。そして試合が終わって帰路につくころに、誰もいないグラウンドではようやく「陸風」に変わっているのです(見たことないけど!)
また、「浜風」以外にも、「雨風」という言葉が実況中継で出てくることがあります。
これは、雨が降る前、「浜風」とは逆の風向きになることです。低気圧が西から進んでくる時、低気圧が太平洋側にあると、低気圧の中心に向かって風が吹き込むので、甲子園では北寄りの風になります。
低気圧が日本海側だと、浜風とほぼ同じ風向きになるので、あまり気が付きませんが。
「海陸風」は高気圧に覆われていて穏やかな時に起こりやすい現象で、低気圧や台風など、強い風をもたらすものが近づいてくると、そっちの方が「海陸風」のメカニズムより卓越します。
さらに、「秋風」というのもあります。
シーズン終盤に、これも北寄りの風になることがありますが、晩秋になると低気圧通過後に冷たい北風が吹くことがあり、この風が吹くと「もうシーズン終わりやなぁ」と思うのです。
特に、「暗黒時代」と呼ばれた1990年代は、チーム成績もあいまって「秋風」が余計に冷たく感じられたものですが、最近ではありがたいことに、11月までアツアツ!
今年の夏も異常気象?猛暑?と心配されていますが、11月の日本シリーズまで盛り上がり、「秋風がアツい異常気象」は大歓迎!
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